<p>「公認会計士・税理士として事務所を構えながら、メタバース事業会社のCFOを務め、さらにDAOの政策提言団体まで運営する」——こう聞くと、節操なく手を広げているように見えるかもしれません。しかし私の中では、これらはすべて一本の線でつながっています。本記事では、4つの事業体を並行して動かす私・星野宇潮(ほしの・うしお)が、「並行経営の方法論」と「専門性と多様性は両立するのか」というテーマについて率直にお話しします。経営者・個人事業主・スタートアップの方が、自分のキャリア設計や事業ポートフォリオを考えるうえでのヒントになれば幸いです。</p>
<h2>私が並行して動かしている4つの事業体</h2> <p>最初に、私が現在どのような立場で何を担っているのかを整理しておきます。肩書きの羅列に見えるかもしれませんが、後半の方法論を読むうえで前提になるので、お付き合いください。</p> <table> <thead><tr><th>事業体</th><th>私の立場</th><th>領域・役割</th></tr></thead> <tbody> <tr><td>メタワークス会計事務所/メタワークスコンサルティング</td><td>代表</td><td>公認会計士・税理士による会計税務・経営コンサルティング</td></tr> <tr><td>株式会社インベーダーズ</td><td>取締役CFO</td><td>メタバース・コミュニティ事業会社の財務統括</td></tr> <tr><td>ソーシャルノバ</td><td>事業責任者</td><td>インベーダーズが運営するメタバース事業ブランド</td></tr> <tr><td>一般社団法人RULEMAKERS DAO</td><td>監事</td><td>DAO・Web3に関するルールメイキング/政策提言</td></tr> </tbody> </table> <p>会計の専門家、事業会社の経営者、そして制度づくりに関わる立場——一見バラバラですが、私はこれらを「未来の居場所づくり」という一つのテーマの異なる現れ方だと捉えています。会計税務の各サービスは<a href="https://metaworksgroup.jp/">メタワークスグループの公式サイト</a>にまとめています。</p>
<h2>「並行経営」は本当に珍しいのか</h2> <p>結論から言えば、「複数の事業に関わること」自体はまったく珍しくありません。上場企業の経営者が複数社の社外取締役を兼務する、いわゆるパラレルキャリアや副業を持つ会社員が増える、というのは社会全体の流れです。実際、副業・兼業の解禁は政府の働き方改革の文脈でも後押しされてきました。</p> <p>では何が少数派かというと、「自分が創業・立ち上げに関わった複数の事業体を、いずれも代表・責任者として並行運営する」という形です。雇われの兼務でも、出資だけの関与でもなく、それぞれで意思決定の最終責任を負う。ここまでやると、確かに同業の公認会計士・税理士の中でも例は多くありません。私がこの形を選んだのは、計画して狙ったというより、「目の前の課題を突き詰めたら隣の領域につながっていた」結果です。</p>
<h3>士業の独立と事業経営は、本来地続きである</h3> <p>私は税務・会計の現場で、IPO(新規株式公開)を目指すスタートアップを20社以上支援してきました。そこで痛感したのは、「数字を正しく作る人」と「事業を前に進める人」が分断されていると、会社は伸び悩むということです。会計はあくまで事業の写像であり、事業を理解しない会計は形だけになります。だからこそ、自分自身も事業の当事者でありたいと考えました。士業としての独立と事業経営は、私の中では対立するものではなく地続きなのです。</p>
<h2>並行経営を支える3つの方法論</h2> <p>「どうやって時間とエネルギーを配分しているのか」は、最も多く受ける質問です。私が意識的に実践している原則は、次の3つに集約されます。</p>
<h3>1. テーマの一貫性で「シナジー」を設計する</h3> <p>4つの事業体は、すべて「未来の居場所づくり」というテーマでつながっています。メタバースは物理的制約を超えた居場所、DAOは新しいガバナンスによる居場所、会計事務所はそうした挑戦をする人たちの足元を支える居場所——という具合です。</p> <p>テーマが一貫していると、ある事業体での学びがそのまま別の事業体の資産になります。たとえばメタバース事業の運営で得たユーザー行動の知見は、メタバース関連企業への会計税務アドバイスの解像度を上げてくれます。逆に、税務の最新動向はDAOの制度設計議論に直接活きます。バラバラの4つではなく、相互に養分を送り合う一つの生態系として設計することが、並行経営の前提です。</p>
<h3>2. 役割を「意思決定」に絞り、実務は委ねる</h3> <p>私が4つすべての日常実務を回しているわけではありません。各事業体には実務を担う専門家やスタッフがいます。私自身が中心的に担うのは、次の3点に絞っています。</p> <ul> <li><strong>方向性の決定</strong>——どこへ向かうか、何をやらないかを決める</li> <li><strong>重要な意思決定</strong>——投資・採用・提携など、後戻りしにくい判断</li> <li><strong>対外コミュニケーション</strong>——事業体の「顔」として信頼を担う</li> </ul> <p>逆に言えば、日常のオペレーションを手放せる体制を作ることが先決です。これは権限委譲の話であると同時に、内部統制(誰が何を承認するか)の設計でもあります。CFOやIPO支援の現場で培った「仕組みで回す」発想が、ここで効いています。経営者が全部抱え込むと、事業は経営者のキャパシティが上限になってしまいます。</p>
<h3>3. テクノロジーで「自分の時間」を増幅する</h3> <p>複数事業のスケジュール・タスク・情報共有を、クラウドツールやAIで徹底的に効率化しています。議事録の自動要約、情報のナレッジ化、定型業務の自動化——こうした積み重ねが、限られた時間を何倍にも増幅してくれます。会計事務所としても、クラウド会計やAIの活用は顧問先への提供価値そのものになっており、自社で使い倒した実感がそのままサービス品質に反映されます。</p>
<h2>「専門性が薄れる」という批判への私の答え</h2> <p>「あれもこれも手を出すと専門性が薄まる」という指摘は、もっともに聞こえます。しかし私の実感は逆で、<strong>異なる領域に踏み込むほど、本業の専門性はむしろ深まりました</strong>。具体例を挙げます。</p> <ul> <li><strong>メタバース事業の当事者になったこと</strong>で、メタバース・コンテンツ関連企業の収益認識や無形資産の扱い、ユーザー課金モデルの会計処理について、机上ではなく当事者の肌感覚で語れるようになりました。</li> <li><strong>DAO・Web3の制度づくりに関わったこと</strong>で、暗号資産・トークンを扱う企業の税務支援の質が変わりました。制度の「なぜそうなっているか」を知っていると、グレーゾーンの判断の精度が上がります。</li> </ul> <p>専門性と多様性は、トレードオフではなく相互強化の関係にある——これが20社超のIPO支援と複数事業の経営を通じた、私なりの結論です。</p>
<h3>合同会社型DAOという「制度のフロンティア」</h3> <p>多様性が専門性を深めた最たる例が、DAOの制度づくりです。日本では2024年、金融商品取引法に関する内閣府令の改正により、いわゆる「合同会社型DAO」を設立しやすくする枠組みが整いました。合同会社(日本におけるLLCに相当する会社形態)の社員権をトークンとして扱う設計に道が開かれ、それまで法人格を持たない任意団体として運営されることが多かったDAOが、合同会社という会社形態を用いることで会社法上の法人格と一定の法的安定性を備えやすくなったものです。</p> <p>この領域は制度自体が新しく、要件や実務の解釈は今も動いています。たとえば「業務執行社員以外への収益分配をどこまで認めるか」といった論点は、規制の重さと組織の自由度のバランスの中で慎重に設計する必要があります。私はこうした議論の当事者として関わってきましたが、<strong>制度の詳細や最新の取扱いは、必ず金融庁・経済産業省の公式情報や、専門の税理士・弁護士にご確認ください</strong>。制度の最前線にいるからこそ、「うろ覚えで断言しない」ことを自らに課しています。Web3・DAOの会計税務にご関心のある方は、<a href="https://metaworksgroup.jp/">メタワークスグループのサービス案内</a>もあわせてご覧ください。</p>
<h2>若いプロフェッショナルへ伝えたいこと</h2> <p>これから独立や起業を考える公認会計士・税理士、あるいは若い経営者の方に、二つだけお伝えしたいことがあります。</p> <ol> <li><strong>「専門性を深める」だけがキャリアではない。</strong>多様な領域を経験することで、専門性そのものが進化します。一つの事業体に留まる前提を、若いうちから一度疑ってみてください。</li> <li><strong>キャリア全体を貫く「テーマ」を早めに見つける。</strong>私にとっての「未来の居場所づくり」のように、軸となるテーマがあれば、複数の事業を並行しても判断がブレません。逆にテーマがないまま手を広げると、ただ忙しいだけの人になります。</li> </ol> <p>並行経営は誰にでも勧められるものではありませんし、向き不向きもあります。ただ「専門家だから一つの道だけ」と最初から決めつける必要もない、ということは伝えておきたいのです。</p>
<h2>よくある質問(FAQ)</h2> <h3>Q. 副業・兼業や複数事業を始めると、確定申告や税務はどう変わりますか?</h3> <p>A. 一般論として、複数の収入源を持つと、所得区分(事業所得・給与所得・雑所得など)の判定や、それぞれに応じた申告・経費按分の整理が必要になります。法人と個人を併用する場合は、役員報酬の設計や法人・個人間の取引にも注意が要ります。具体的な区分や控除の要件は個別事情で変わり、税制改正もあるため、最新の取扱いは国税庁(タックスアンサー)の公式情報を確認するか、税理士にご相談ください。</p> <h3>Q. 法人を複数持つのと、一つの法人で多角化するのは、どちらが良いですか?</h3> <p>A. これは「正解が一つ」という問いではありません。事業ごとに責任やリスクを分けたい、外部資本や提携を入れやすくしたい、将来の売却・上場を見据えたい、といった目的なら法人を分ける選択に合理性があります。一方で、管理コストや内部統制の手間は確実に増えます。事業の独立性・資本政策・将来構想を踏まえて設計すべきで、税務・法務の影響も大きいため、専門家を交えた検討をおすすめします。</p> <h3>Q. DAOやWeb3の事業を始めたいのですが、会計・税務で気をつける点は?</h3> <p>A. 暗号資産・トークンの保有や取引は、評価のタイミングや課税の考え方が通常の取引と異なる場面があり、制度も発展途上です。合同会社型DAOのような新しい組織形態は、収益分配の制限など独自の論点も伴います。考え方の原則を押さえたうえで、必ず金融庁・経済産業省の公式情報や、Web3に明るい税理士・弁護士に確認しながら進めてください。判断を誤ると後から大きな負担になりかねない領域です。</p>
<h2>まとめ/ご相談</h2> <p>4つの事業体の並行経営は、(1)テーマの一貫性、(2)役割を意思決定に絞る、(3)テクノロジーによる増幅——というシンプルな原則の積み重ねで成り立っています。そして、多様な領域に踏み込むことは専門性を薄めるどころか、むしろ深めてくれる。これが私の実感です。</p> <p>メタワークス会計事務所/メタワークスコンサルティングでは、IPOを見据えたスタートアップの支援から、メタバース・Web3・DAOといった新領域の会計税務まで、当事者として現場を知る立場でご相談に対応しています。「複数事業を始めたい」「新しい組織形態を検討している」「数字の体制を整えたい」といった段階の方は、ぜひ一度お問い合わせください。本記事は公認会計士・税理士であり、一般社団法人RULEMAKERS DAO監事として制度づくりにも関わる<a href="https://invaders.co.jp/members/hoshino-ushio.html">星野宇潮</a>の知見をもとに構成しています。</p>
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