インタビュー

星野宇潮インタビュー⑧ ─ 数十万人規模のメタバースイベントはなぜ成立するのか。在京キー局・大手鉄道・大学との協創と、その会計・運営の本質

<p>本記事は、株式会社インベーダーズのメタバース事業ブランド「ソーシャルノバ」の事業責任者であり、公認会計士・税理士でもある星野宇潮(ほしの・うしお)が、在京キー局・大手鉄道・大学等と連携した延べ数十万人規模のバーチャルイベント運営の舞台裏と、その成功を支える本質的な仕組みを語ったインタビュー記事です。聞き手はメタワークス会計事務所編集部。</p>

<p>星野は、IPO支援を20社以上手がけてきた会計の実務家であると同時に、一般社団法人RULEMAKERS DAOの監事として合同会社型DAOの立法にも関与してきました。「人が集まる場」を、技術・コミュニティ・組織・お金の四つの視点から同時に捉えられる稀有なキャリアが、メタバースイベントの語りにも一貫して表れます。監修者の詳細プロフィールは<a href="https://invaders.co.jp/members/hoshino-ushio.html">星野宇潮の紹介ページ</a>をご覧ください。</p>

<h2>「数十万人規模」という言葉の、本当の意味</h2>

<p>― まず、ソーシャルノバの規模感から教えてください。</p>

<p>「ソーシャルノバ(socialnoba.work)は、株式会社インベーダーズが運営するメタバース事業ブランドです。これまでに、在京キー局・大手鉄道・大学・教育機関などと連携した、延べ数十万人規模のバーチャルイベントを企画・運営してきました。日本国内のメタバースイベント領域で、この規模を継続的に成立させている事業者は、決して多くありません」</p>

<p>「ただ、僕が一番伝えたいのは『何人来たか』ではないんです。数十万人という数字は結果であって、目的ではない。会計の仕事をしていると、数字は『どう積み上がったか』のプロセスがすべてだと痛感します。一人ひとりが、なぜその空間に来て、どれだけ滞在し、何に心を動かされ、また戻ってきたのか。その積分が数十万人なんです。動員のピーク値ではなく、エンゲージメントの総和として捉えています」</p>

<h3>「集める」と「集まる」は違う</h3>

<p>「広告を大量に出せば、初回の数字は一時的に作れます。でもそれは『集めた』だけで、『集まった』わけではない。翌週には誰もいない空間が残る。これはコミュニティ運営でも、IPOを目指す事業の成長でも、本質は同じです。一過性の数字は、必ず後で剥がれ落ちます」</p>

<p>「だから僕らは、最初の設計段階から『二回目に来たくなる理由』を空間に埋め込みます。リピート率や継続率を見ない大規模イベントは、僕の感覚では事業として未完成です」</p>

<h2>在京キー局との協創 ─ 「見る」から「参加する」へ</h2>

<p>― 在京キー局との取り組みは、どのようなものですか。</p>

<p>「テレビ局のIP(知的財産)は、すでに広く認知されている、極めて強いコンテンツです。その強みをメタバース空間で『体験できるもの』に変換すると、視聴者は『見る』だけの存在から、『参加する』ファンへと変わります。これがソーシャルノバの提供価値の核心です」</p>

<p>「テレビは一方向のメディアでした。素晴らしい完成度の映像を、視聴者は受け取る。でもメタバースは双方向です。同じ世界に自分のアバターで入り込み、他のファンと隣り合い、コンテンツの中に立つことができる。『推し』の世界に文字通り入場できるわけです。この体験の質的な転換が、ファンの熱量を一段引き上げます」</p>

<p>「事業の観点で言えば、これは『ファンの関与の深さ』を資産に変える試みです。視聴率という瞬間風速だけでなく、ファンが繰り返し戻ってくる場をIPに付随させることで、コンテンツの収益機会を時間軸方向に伸ばせる。IPホルダーにとっての価値は、ここにあります」</p>

<h2>大手鉄道との協創 ─ 駅・沿線という「経済の中心」を拡張する</h2>

<p>― 大手鉄道との連携についても聞かせてください。</p>

<p>「鉄道事業者にとって、駅と沿線は地域経済の中心拠点そのものです。そこを『リアル+メタバース』のハイブリッド体験で活性化することで、利用客の滞在時間を伸ばし、周辺での消費を促す効果が期待できます」</p>

<p>「鉄道会社の事業は、運賃収入だけで成り立っているわけではありません。駅ナカ、沿線開発、不動産、商業施設 ― 『人が集まる場所をどう価値に変えるか』が経営の中心テーマです。メタバースは、その『場』を物理的な改札の外まで拡張する手段になります。遠方に住む人や、まだ沿線に来たことのない人に、先に世界観を体験してもらい、リアルへの来訪につなげる。デジタルとリアルの送客を循環させる発想です」</p>

<h2>大学との協創 ─ 少子化時代の「体験できる広報」</h2>

<p>― 大学との取り組みは、社会的な意義も大きそうです。</p>

<p>「大学との連携では、オープンキャンパス・卒業式・学際的な研究プロジェクトのメタバース化を支援してきました。少子化が進むなかで、『遠方の高校生や保護者にも、キャンパスの雰囲気を体験してもらえる』ことの戦略的価値は、年々高まっています」</p>

<p>「パンフレットやWebサイトは情報を『伝える』ものですが、メタバースは雰囲気を『体験させる』ものです。地方や海外にいて、簡単には足を運べない受験生にとって、これは志望校選びの判断材料そのものになります。教育機会の地理的な格差を、ほんの少しでも埋められる。会計の人間がこんなことを言うのも変ですが、ここは数字以前に、社会的に意味のある仕事だと感じています」</p>

<h2>成功の本質 ─ 「空間をつくる」と「場を運営する」の決定的な差</h2>

<p>― 数十万人規模を成立させられる、本質的な理由はどこにあるのでしょうか。</p>

<p>「結論から言えば、『メタバース技術 × コミュニティ運営の一体化』です。きれいな3D空間をつくれる事業者は、世の中にたくさんいます。でも、空間は器でしかありません。器に魂を入れるのが運営なんです」</p>

<p>「僕らが統合的に担うのは、おおむね次の要素です」</p>

<ul> <li><strong>心理的安全性の設計</strong> ― 初めて入った人が萎縮しない導線、迷惑行為への明確な対応方針、モデレーション体制。安心して滞在できる空気は、放っておいては生まれません。</li> <li><strong>継続的なエンゲージメント</strong> ― 一度きりで終わらせず、定期的に「行く理由」を更新し続ける仕掛け。</li> <li><strong>コンテンツの継続更新</strong> ― 空間も催しも、止まった瞬間に陳腐化します。鮮度を保ち続ける運営力。</li> <li><strong>事後コミュニティの形成</strong> ― イベントが終わった後も、参加者同士のつながりが残り、次につながる関係性をつくること。</li> </ul>

<p>「この四つを最後まで担い切れるかどうかが、単発のお祭りで終わるか、継続する『居場所』になるかの分かれ目です。数十万人という数字は、この運営力の積み重ねの結果として、はじめて到達できるものなんです」</p>

<h3>なぜ会計士・税理士が、メタバースの『場』を語れるのか</h3>

<p>「よく聞かれます。会計の専門家が、なぜコミュニティやメタバースの運営を語れるのか、と」</p>

<p>「僕はこれまで、公認会計士・税理士として企業経営の現場に深く関わり、20社を超えるIPO支援に携わってきました。さらに、合同会社型DAOの立法に関与し、一般社団法人RULEMAKERS DAOの監事も務めています。会社という組織も、DAOという新しい組織も、突き詰めれば『人が共通の目的のために集まり、ルールを決め、価値とお金を循環させる仕組み』です。メタバースの『場』も、本質はまったく同じなんです」</p>

<p>「だから僕は、ひとつの場を、技術・コミュニティ・組織設計・お金という四つの面から同時に見ます。誰が集まるか(コミュニティ)、どんなルールで運営するか(組織)、どう収益が立ち費用が出ていくか(会計・税務)、それを何で実現するか(技術)。この四つが噛み合わないと、場は長続きしません。多くのメタバース事業者が技術だけ、あるいはイベント企画だけに偏るなかで、僕らは『場の経営』として全体を捉えられる。これが他社との決定的な違いだと思っています」</p>

<h2>数字の裏側 ─ 「継続運営」を前提にすると、会計設計が変わる</h2>

<p>― 会計・税務の実務家として、運営者が見落としがちな論点はありますか。</p>

<p>「ここからは僕の専門領域の話です。大規模イベントを『単発の打ち上げ花火』ではなく『継続する事業』として設計しようとした瞬間に、お金まわりの考え方が大きく変わります」</p>

<p>「たとえば収益区分。チケット販売、スポンサー収入、出展・ブース料、デジタルアイテム販売、継続課金のコミュニティ会費 ― これらは収益を認識すべきタイミングが異なります。事前に販売したチケットや年額の会費は、いったん前受金として預かり、サービスを提供する期間に応じて売上を認識するのが基本的な考え方です。複数回にまたがるスポンサー契約も同じく、契約期間で按分して捉えます。継続運営を見据えるなら、この期間配分の設計を最初に決めておくべきです」</p>

<p>「消費税も論点になります。国内で提供されるイベントは原則として課税対象ですが、海外の参加者に向けた配信などは『電気通信利用役務の提供』として国境を越える取引のルールが関わってきます。VRChatやVket Cloudのようなプラットフォーム経由で売上が立つ場合は、自社が当事者(本人)なのか仲介(代理人)なのかで、売上を総額で計上するか純額で計上するかが変わる。ここは契約条件と取引の実態で個別に判断するところです」</p>

<p>「こうした論点の詳細は、メタワークスのコラムでも整理しています。会計処理の全体像は<a href="https://metaworksgroup.jp/topics/metaverse-business-accounting">メタバース事業の会計・税務処理ガイド</a>を、イベント運営に特化した実務は<a href="https://metaworksgroup.jp/topics/metaverse-event-operations">メタバースイベント運営の会計実務</a>をご覧ください。DAOやトークンが絡む場合は、論点がさらに広がります。<a href="https://metaworksgroup.jp/topics/dao-tax-accounting">DAOの税務・会計処理ガイド</a>もあわせて参考にしてください」</p>

<p>「ただし、税率や課税区分、関連する法制度は改正されることがあります。実際の判断にあたっては、必ず最新の公式情報(国税庁の公式情報やタックスアンサー等)をご確認のうえ、税理士へご相談ください」</p>

<h3>イベント別の損益管理が、続編を生む</h3>

<p>「もうひとつ強調したいのが、イベントごとの損益管理です。複数のイベントを開催するなら、案件ごとにコードを振り、直接費と配賦すべき共通費を分けて整理し、一件ずつ損益を確定させていく。これは経理の手間の話に見えて、実は『次にどの企画を続けるか』という経営判断のための地図になります」</p>

<p>「数十万人を集めても、一件ごとの採算が見えていなければ、事業としては脆い。逆に、地味でも黒字で回り続ける企画こそが、コミュニティの土台になります。僕がIPO支援で見てきた、伸びる会社の共通点とまったく同じ構造です」</p>

<h2>今後の展望 ─ メタバースは「居場所」として社会に定着する</h2>

<p>― 最後に、今後の展望を聞かせてください。</p>

<p>「メタバースは『ただの空間』ではなく、『人が集まる新しい居場所』として社会に定着していく、と僕は考えています。一過性のブームではなく、生活や事業のインフラとして残っていく方向です」</p>

<p>「そのためにソーシャルノバが推進していくのは、次の三つです」</p>

<ol> <li><strong>業種・規模を問わない協創</strong> ― 大企業から自治体、教育機関、中小・スタートアップまで、多様なクライアントと組み、用途を広げていきます。</li> <li><strong>運営ノウハウの体系化・発信</strong> ― 属人的な経験を、再現できる方法論として整理し、業界全体の水準を引き上げます。</li> <li><strong>コミュニティ運営人材の育成</strong> ― 場を運営できる人を増やすことが、この領域の最大のボトルネック解消につながります。</li> </ol>

<p>「メタバース活用を検討中の組織の皆さんには、ひとつだけお願いがあります。どうか『単発イベント』ではなく『継続運営』を視野に入れてください。一度きりの大花火より、地道に続く小さな焚き火のほうが、最後にはずっと大きな価値を生みます。継続運営によってこそ、メタバースの真価は発揮されるんです」</p>

<h2>よくある質問(FAQ)</h2>

<h3>Q1. メタバースイベントは、単発でも意味がありますか。継続運営でないと駄目なのでしょうか。</h3> <p>単発のイベントにも、認知獲得や話題化という明確な価値があります。決して無駄ではありません。ただ星野が一貫して述べているのは、単発で得た熱量を受け止める『場』を用意しておかないと、せっかくの参加者との関係がその日で途切れてしまう、という点です。理想は、単発イベントを入口にしつつ、事後にコミュニティへ接続する導線をあらかじめ設計しておくこと。最初から壮大な継続運営を構える必要はなく、まずは「次につながる小さな仕掛け」から始めるのが現実的です。</p>

<h3>Q2. 大規模イベントを開催するうえで、会計・税務面で最初に整理しておくべきことは何ですか。</h3> <p>まずは収益の種類(チケット、スポンサー、出展料、デジタルアイテム、継続課金など)を洗い出し、それぞれをいつ売上として認識するか(前受金か、期間按分か、提供時か)の方針を決めることです。あわせて、海外参加者の有無による消費税の取扱いや、プラットフォーム手数料を総額・純額のどちらで処理するかも、初期段階で確認しておくと後戻りが少なくなります。ただし課税区分や関連制度は改正される可能性があるため、具体的な処理は最新の公式情報を確認し、税理士に相談したうえで確定させてください。</p>

<h3>Q3. なぜ会計事務所がメタバースイベントの相談に乗れるのですか。</h3> <p>メタバースイベントは、空間制作だけでなく、収益・費用の管理、運営法人の設計、参加費やサブスクリプション収入の税務、関係者への報酬設計など、会計・税務の論点が幅広く絡む事業だからです。メタワークス会計事務所は、星野が創業した株式会社インベーダーズおよびソーシャルノバと連携し、こうした新しい領域のバックオフィスを実務として支援してきました。技術や企画だけでなく、「事業として継続できるお金の仕組み」まで一体で相談できる点が特徴です。</p>

<h2>まとめ/ご相談</h2>

<p>数十万人規模のメタバースイベントを成立させてきた本質は、華やかな技術や一時的な動員ではなく、「コミュニティ運営」と「組織・会計の設計」を一体で担い切る運営力にありました。在京キー局・大手鉄道・大学との協創はいずれも、『人が集まる場をどう価値に変えるか』という一点で共通しています。</p>

<p>メタワークス会計事務所・メタワークスコンサルティングは、公認会計士・税理士である星野宇潮の知見と、株式会社インベーダーズ/ソーシャルノバとの連携を通じて、メタバースイベント・コミュニティ事業の<strong>会計・税務、収益化設計、運営体制づくり</strong>を一気通貫で支援します。関連する支援メニューは<a href="https://metaworksgroup.jp/topics/community-support-service">コミュニティ伴走支援</a>や<a href="https://metaworksgroup.jp/topics/web3-crypto-service">Web3・暗号資産関連サービス</a>もあわせてご覧ください。</p>

<p>「単発で終わらせず、続く場をつくりたい」「メタバース事業の経理・税務基盤を整えたい」とお考えの企業・自治体・教育機関の皆様は、お気軽に<a href="https://metaworksgroup.jp/">メタワークス会計事務所</a>へご相談ください。メタバース活用そのもののご相談は、ソーシャルノバ(<a href="https://socialnoba.work/">https://socialnoba.work/</a>)へお問い合わせいただけます。</p>

<p>※本記事の会計・税務に関する記述は一般的な考え方の解説であり、個別の取扱いを保証するものではありません。税率・控除額・課税区分・関連法制度は改正される場合があります。実際の判断にあたっては、必ず国税庁等の最新の公式情報をご確認のうえ、税理士へご相談ください。</p>

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