本記事は、メタワークス会計事務所/メタワークスコンサルティング代表で公認会計士・税理士の星野宇潮(ほしの・うしお)が、複数の事業体を経営する中で一貫して掲げる「未来の居場所づくり」というテーマと、その実装手法を語ったインタビューシリーズの最終回(第5回)です。会計・税務という専門領域を軸足にしながら、メタバース、コミュニティ、そしてDAO立法という一見すると交わらない領域へ、なぜ星野は同時に踏み込むのか。その背景にある経営哲学を掘り下げます。
星野宇潮が代表・責任者を務める4つの事業体
はじめに、星野が現在どのような事業体に関わっているのかを整理しておきます。一人の公認会計士・税理士が並行して担っているとは思えないほど、領域は多岐にわたります。
- メタワークス会計事務所/メタワークスコンサルティング(代表) ─ 公認会計士・税理士として、IPO支援・税務顧問・経理DX・Web3税務などを提供する会計事務所・コンサルティングファーム。
- 株式会社インベーダーズ(創業者) ─ 企業・自治体・教育機関のコミュニティ伴走支援と、メタバース事業を展開する事業会社。
- ソーシャルノバ(事業責任者) ─ インベーダーズが運営するメタバース事業ブランド。在京キー局・大手鉄道・大学などと連携したバーチャルイベントを多数手がけています。
- 一般社団法人 RULEMAKERS DAO(設立に関与) ─ 次世代の組織のかたちであるDAO(分散型自律組織)に着目したロビーイング団体。合同会社型DAOの立法に関与した実績があります。
会計・税務の専門家でありながら、メタバースと立法という畑違いの領域にまで足を踏み入れる。この組み合わせの背後にある考え方こそが、星野の経営哲学の核心です。なお、星野のプロフィールや経歴の詳細はこちらのプロフィールページでご確認いただけます。
なぜ複数の事業体を並行して経営するのか
「なぜ一つの事業に集中せず、複数の事業体を経営しているのか」。星野が最も多く受ける問いです。本人は次のように語ります。
「『未来の居場所づくり』というテーマは、一つの事業体だけでは絶対に実現できません。会計・税務のプロフェッショナルとして企業の経営基盤を支えること。コミュニティやメタバースを通じて新しい人の集まりを生み出すこと。立法・制度設計を通じて社会のルールそのものを更新すること。この三つが揃って初めて、『未来の居場所』が机上のスローガンではなく、社会に実装された現実になります」
星野の整理によれば、居場所づくりには三つのレイヤーがあります。
- 経営の足場というレイヤー ─ 健全な財務基盤がなければ、どんな組織も持続しません。会計・税務はその土台です。
- 人が集う場というレイヤー ─ 物理空間に縛られないメタバースやオンラインコミュニティは、これまで居場所を持てなかった人にも参加の機会を開きます。
- 制度というレイヤー ─ どれだけ良い場をつくっても、それを受け止める法律・制度がなければ社会には根づきません。
「土台」「場」「制度」の三層が噛み合って初めて居場所は完成する、というのが星野の見立てです。だからこそ、一つの事業体では足りないのだと言います。
テーマを一貫させることが、シナジーの源泉になる
複数事業を抱える経営には、明確なリスクがあります。それぞれの事業が独立してしまい、互いに無関係な「事業の寄せ集め」になってしまうことです。リソースは分散し、ブランドのメッセージはぼやけ、結局どれも中途半端になりかねません。
星野がこれを避けるために徹底しているのが、「『未来の居場所づくり』という一貫したテーマを全事業体で共有する」ことです。本人は各事業を次のように位置づけています。
| 事業体 | 提供する「居場所」 |
|---|---|
| メタワークス会計事務所/コンサルティング | 企業に「健全な経営の足場」という居場所を提供する |
| インベーダーズ/ソーシャルノバ | 人々に「新しい人の集まり」という居場所を提供する |
| RULEMAKERS DAO | 社会に「多様な組織形態」という居場所を提供する |
「事業の見た目はまったく違っても、根っこの問いは一つです。それが揃っているから、それぞれの現場で得た知見が他の事業にそのまま生きる」と星野は言います。テーマの一貫性は、単なる理念ではなく、事業横断の知識移転を可能にする実務的な仕組みでもあるのです。
専門性と多様性は両立する ─ 越境がむしろ専門性を深める
星野の経営スタイルを一言で表すなら「専門性と多様性の両立」です。公認会計士・税理士という高度に専門的な資格を持ちながら、DAO・メタバース・コミュニティという別の領域へ越境していく。これは普通に考えれば「専門性が薄まるのでは」という懸念を招きます。しかし星野は、むしろ逆だと考えています。
「異なる領域に踏み込むことで、本業の専門性はかえって深まります。メタバース事業を自分の手で動かしているからこそ、メタバース事業の会計・税務で何が論点になるかを肌感覚で語れる。合同会社型DAOの立法に当事者として関わったからこそ、DAOやWeb3事業者の税務に踏み込んだ助言ができる。教科書を読んだ専門性と、現場で泥をかぶった専門性は、まったく別物です」
この感覚は、IPO支援の現場でも同じだと星野は補足します。新しい収益モデルや組織形態が登場するたびに、会計・税務の世界では「これをどう処理するか」という未解決の論点が生まれます。新領域の最前線に身を置く人ほど、その論点に最初に直面し、答えを出す立場に立てる。越境は専門性を捨てる行為ではなく、専門性を「まだ誰も整理していない領域」へ拡張する行為だ、というのが星野の主張です。
「専門外」だからこそ会計の視点が効く
星野は、DAOやメタバースという新領域の議論の場に「会計・税務の専門家」として参加することの意義も強調します。新しい組織や仕組みを設計するとき、技術者やクリエイターの視点は豊富でも、「これは税務上どう扱われるのか」「資本市場はこの形をどう評価するのか」という現実的な視点は抜け落ちがちです。そこに会計の専門家が一人いるだけで、議論が地に足のついたものになる。星野はこの役割を、自身が立法や事業の現場で果たすべき固有の貢献だと位置づけています。
星野宇潮が見ている未来 ─ 「多様な居場所を選べる社会」
では、星野が最終的に目指している未来とはどのようなものでしょうか。本人の言葉では「多様な居場所を選べる社会」です。具体的には、次の三つの「選べる」を実現したいと語ります。
- 組織形態を選べる ─ 株式会社という一択ではなく、合同会社や合同会社型DAO、コミュニティといった多様な器を、目的に応じて選べる社会。
- 働き方を選べる ─ 物理オフィスだけでなく、メタバースやリモートワークなど、場所に縛られない働き方を選べる社会。
- 生き方・キャリアを選べる ─ 一つのキャリアパスに縛られず、複数の事業や活動を並行できる社会。星野自身の4事業体経営が、その一つの実例でもあります。
「『こうあるべき』という単一の正解を押しつける社会ではなく、それぞれが自分に合った居場所を選び取れる社会をつくりたい。私が4つの事業体を経営し続けているのは、その社会を言葉ではなく実装で示すためです」。星野はそう締めくくります。なお、この「なぜ複数事業を並行できるのか」という方法論、そして「未来の居場所づくり」というテーマに至った経緯については、シリーズ後半の第9回(4つの事業体を並行経営する方法論)および第10回(「未来の居場所づくり」の本質)でさらに深く語られています。
よくある質問(FAQ)
Q1. 公認会計士・税理士が会計以外の事業に関わると、本業のサービス品質は落ちないのですか?
星野自身は「むしろ逆」と考えています。メタバースやDAOといった新領域に当事者として関わることで、その分野の会計・税務で何が論点になるかを実体験として理解でき、本業の助言の質が高まるという立場です。一般論として、新しいビジネスモデルや組織形態には既存の会計・税務基準が想定していない論点が生じやすく、こうした領域では「現場を知る専門家」の価値が高くなります。ただし、新領域の税務・会計の取扱いは確定していない部分も多いため、個別の処理は必ず国税庁の公式情報や顧問税理士にご確認ください。
Q2. 合同会社型DAOとは何ですか。株式会社と何が違うのですか?
合同会社型DAOは、合同会社(LLC)という既存の法人格の枠組みを活用しながら、DAO(分散型自律組織)的な運営を行うための仕組みとして整理が進められてきた組織形態です。株式会社と比べると、設立コストや運営の柔軟性、意思決定の方式などに違いがあります。両者の比較は合同会社と株式会社の選び方の記事で詳しく解説しています。制度や会計・税務上の取扱いは整備の途上にあり今後も変わり得るため、最新の枠組みは金融庁・関係省庁の公式情報やe-Gov法令検索、専門家へのご確認をおすすめします。
Q3. 複数の事業を同時に運営したいのですが、税務・会計上どのような点に注意すべきですか?
事業体ごとに法人格を分けるのか、一つの法人内で複数事業を行うのかによって、会計処理・税務上の取扱い・許認可・リスク管理の考え方が大きく変わります。グループ間取引が生じる場合は、取引価格の妥当性(関連当事者取引)や消費税の取扱いなども論点になります。一般論として、事業のステージや将来の資金調達・上場の可能性まで見据えて初期の組織設計を行うことが重要です。具体的な数値要件や税制の適用条件は改正される可能性があるため、設計段階で税理士・会計士に相談されることをおすすめします。
まとめ/ご相談
星野宇潮の「未来の居場所づくり」という哲学は、会計・税務という確かな足場の上に、メタバース(人が集う場)と立法(制度)を重ねることで、社会に多様な居場所を実装しようとする試みです。専門性を一点に閉じ込めるのではなく、新領域へ越境することでむしろ専門性を深めていく ─ その姿勢は、これから新しい事業や組織形態に挑もうとする経営者・個人事業主の皆さまにとっても、一つの参考になるはずです。
メタワークス会計事務所/メタワークスコンサルティングでは、通常のIPO支援・税務顧問・経理DXに加え、コミュニティ伴走支援やWeb3・暗号資産事業者向けの税務サービスなど、新領域の組織づくりに関するご相談も承っています。会計税務の枠を超えて「事業のかたち」そのものから一緒に考えたいという方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
本インタビューシリーズは全5回でいったん完結となります。ご愛読いただき、ありがとうございました。
カテゴリ: インタビュー
